ムツゴロウさんと仕事して

ユウ_zetterlund

2008年07月25日 10:25

以前、ムツゴロウさんこと畑正憲さんといっしょに仕事をさせてもらったことがあります。ご存知のようにムツゴロウさんは文筆家でありナチュラリストの元祖的な存在です。

かつてコンラート・ローレンツ博士との対談で語られたふたりの会話は非常に興味深く、ムツゴロウさんにとってまさに人生の転機となったほどの大きな出会いでした。これ以後、ムツゴロウさんはいっきに動物へと傾倒を深め、世に知られる「おーよしよしよし・・・」と動物たちとペロペロしあうほどの異常ともいえるほどの動物好きへ。

彼の著書である「ムツゴロウの博物志」は、山へと一直線に傾倒していた少年時代の僕にとって、山岳以外の分野で夢中になって読んだ本です。これは今でも、コンラート・ローレンツ氏の「ソロモンの指環・動物行動学入門」「人イヌにあう」などの僕のバイブル的な本とともに書庫のどこかにあるはずです。

ムツゴロウさんは、外部企画運営会社の話にのって“あきる野”に動物王国を作り一波乱ありましたが、僕のムツゴロウさんに対する見方はずっと変わりません。ビジネスに向かない人ですが、とても動物に対する愛情に溢れた方です。“素晴らしい人”という言葉を安易に使って形容するほど、薄っぺらな方ではないし、単純でもありません。

ご一緒したのはフィルムメーカーとペット雑誌の共同企画の際です。応募されたペット写真から各賞を選定するのですが、ムツゴロウさんは写真に写されたワンチャンを一瞬見るや、楽しそうに様々なことを話はじめるのです。

(部屋でコチラを見あげて嬉しそうにしている犬の写真を見て)
「このワンチャンはきっと飼い主に怒られた後なんですね。ひじょうにワンパクで、飼い主が出かけるときに一緒に行きたいと騒いでハッスルしちゃったんでしょうね。それで、飼い主が怒って外出してしまい、戻ってきてから、この写真を撮ったんでしょう。この独特の表情は、飼い主の怒りをうかがい見つつ、喜びを表現しているんです・・・

とか

(緑の芝でゴロゴロしている二匹の犬の写真を見て)
「ああ、かわいいですね~。おーよしよし・・・この右のワンチャン、まだ童貞ですね。メスを知らないんですね。この態度はですね、こちらがオスでこちらがメス。二匹はファミリーではなくて、別々の飼い主さんのワンチャンですね。女の子に興味があるけれど、どう接していいかわからない。きっと一匹だけで飼われているのでしょう。このコはひじょうにやんちゃな性格ですが、臆病さも持っていて、子どもの頃、厳しくされたんでしょうね・・・気持ちを表すのにためらいがあるんですね・・・

なんて具合に、なんの変哲もない犬の写真を見て次々と話してくれる。それがどれもこれも、ものすごく面白くて、ムツゴロウさんの横ですっかり彼の話術に魅了されてしまいました。ムツゴロウさんのすごさは後日証明されます。その全てをコラムにしつつ、実際の状況をそれぞれ飼い主さんに話を聞くと、なんとムツゴロウさんの話とピタリ一致します。

ムツゴロウさんて、ほんとうにすごい人です。ますます好きになってしまいました。


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