OPINELのナイフ
【逸品CLUB №12】OPINELのナイフ
僕は気心の知れた友人には、誕生日などの機会にナイフ・・・それもフランスのOPINEL(オピネル)を贈ることにしている。だからなのか、クリスマスなどにナイフをプレゼントされることも多く、今ではバック、ビクトリノックス、柄に彫刻が施されたアメリカ製のナイフ・・・などなど、かなりの本数を所有することになってしまった。
本当は「OPINELの何番が欲しい?」と聞いてくれると、もう小躍りしたくなるほど嬉しいのだけれど・・・№8が2本もあるので、できれば№6か№7が欲しと思っている。
さて、このOPINEL。僕が友人に気軽にプレゼントできるのだから高いわけがない。たかだか一本千円ちょっとで買うことができるのだ。じゃあもっと高級なものをあげれば、と思われるかもしれないけれど、OPINELは十分に素晴らしいナイフで、これさえあれば、もう他のナイフはいらないという気分にさえさせてくれるのだからウレシイ(笑)
そのうえOPINELは、MOSSテント同様に「ニューヨーク近代美術館」にも収蔵されており、加えてロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館による「世界で最も美しい100の製品」にも選出されている。つまり世界が認めた逸品ということ。
しかし逸品だから愛用している、ということではなくて、持っていたい気分にさせてくれる・・・ブナの天然木のハンドル、独特のデザインのブレード(刃)、そしてシンプルな構造。通常のナイフと違って、これは刃を出して、根元のリングを回してロックするというなんとも原始的な仕組み。これがまたいいんです。
柔らかな曲線を持つブナの天然木のハンドルは、しっくりと手に馴染み、使い込むほどに飴色の素晴らしい色に仕上がってくる。ブレードだって、見れば見るほど独特な形状であることが見えてきて、そんじょそこいらの工業製品的なデザインとは何かが違うぞ、という気にさせてもくれる。もちろんOPINELは大量生産の工業製品なのだけれど。
理由は多分にルーツにあるのだろうか。フランスの野鍛冶であったジョセフ・オピネルが、1890年に作り出したフォールディングナイフを原点に、基本的なデザインを変えずに現在に至っている。知人の登山家や怪談CLUBの“丹沢で幽霊を車で轢いた”記事に登場するフライフィッシャーマンのS氏など、多くの知人友人たちのザックのポケットに、このナイフは収まってもいる。
さて、サイズのバリエーションは、一般的に№2~№12。仕様としては№2~№5は刃が炭素鋼で、リングのロック無し。№6~№12は炭素鋼とステンレス鋼の二種。このうち、ショップでよく見かけるのが№8~№12。僕が持っているのは№8、№12の炭素鋼モノ。やっぱり原点はこれでなくちゃネ。
錆びにくいのはステンレスだけれど、切れ味にこだわると炭素鋼。ダッチの原点が鋳鉄であるLODGEであるのと同じだ。ダッチオーブンといえば鋳物、ナイフといえば炭素鋼。LODGEを選ぶ人は、きっとブナの無垢材のハンドルと炭素鋼のOPINELを手にしたときに、LODGE同様に歴史と伝統を所有する、という何ともいえない無常の喜びを感じてしまうに違いない。
以前は№4か5、№10も持っていましたが、ほとんど出番がないうちに紛失してしまいました。結局手元に残ったのが、携帯ナイフとして便利な№8と、キャンプで包丁として使用している№12。この№12には、伝統的な男のツールとしての背景もあって、フランスでは軍隊入隊時に№12が支給されます。
ナイフとしてだけでなく包丁としても使える大きめのOPINELで調理していると、僕などは、もうそれだけで“あーキャンプに来ているんだなぁ”という、喜びを感じてしまう。なんだか、いつまでも下ごしらえをしていたくなる、不思議なツール。
ハンドルに刻印されているマークは、通称“クラウンド・ハンド”と呼ばれ、オピネル家が鍛冶をしていた町に建つ“サン・ジャン・ド・マリアンヌ聖堂”の参事会の紋章を原型とし、3本の指を立てた右手は、洗礼者ヨハネがキリストに洗礼を施した時の手の形と云われている。
伝統とか歴史とか、機能一辺倒でないところに、持つ喜びを感じさせてくれる。OPINELとはそんな折りたたみナイフだ。
OPINEL(オピネル) オピネルフォールディングナイフ#8これが№8。大きすぎず小さすぎず、手のひらにぴったりフィットするサイズのオピネル。ブナの無垢材のハンドルがいい味出してます。またブレードはステンレスではなく、切れ味のいいカーボンスチール(炭素鋼)。切れなくなったらシャープナーで研げば復活します。使えば使うほど、いい味でます。
OPINEL(オピネル) フォールディングナイフ#12で、こちらが大きめの№12。フランス軍入隊で支給される伝統的サイズです。アウトドアで様々使用するには機能的で用途が最も広いと思います。僕はこれを、もっぱらクッキングに愛用しています。ですから包丁は持参しません。№12で下ごしらえすることを考えるだけで、料理するのが待ち遠しくなってしまいます(^^;; それと・・・肉を切るのであれば、芸術品のように研ぎすぎてしまうと、かえって切れにくくなってしまいます。刃先に目に見えに程のぎざぎざがあると肉の脂肪がついても切れ味はかわりません。僕は仕上げの研ぎに、砥石と直角に刃をあててコシコシします。イメージとしては十字架の長いほうが砥石、そして短いほうがナイフのブレード、といったかんじです。これは日本刀の原理といっしょで、斬り合いとか合戦前に、武士が庭の砂山に刀をグサグサと突き立てて刃先をぎざぎざにするのと同じです(^^;;
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