怪談CLUB「稜線のテント場にて」
怪談CLUB 第十七話
それは、未明のできごとだった。
テントの外でガラリ、と石の音が聞こえた。
その音で目が覚めた。
石の音を立てるというのは、野生動物ではない。人間だ。ボクはテントの中で、じっと耳をそばだて、息を殺して何かの気配を探った。動くとシュラフのサラサラという音が外の何かに気取られそうで、じっと息を殺したまま、しょぼしょぼする目をしばたいた。
月齢15に近いこの夜は、高気圧の影響で雲一つない空のはず。きっと満天の星の上には、銀色の月が輝いているのだろう。テントの中はかなり明るかった。
しばらくしても、いっこうに何の気配もなく、いい加減「気のせいかな・・・」そう思った時だった。
耳元で、本当に耳に唇がつくほどの距離感覚で「ちがうのよぉ・・・」という明瞭な女の声。嘆願するような、喉の奥から絞り出す震えるような声だった。
その瞬間、ざわざわと全身が総毛だった。頭髪さえザワリと総毛立っていた。鳥肌立つという経験は山をやっていて何度も経験したけれど、頭髪が逆立つような感覚はは初めてだった。ぷつぷつという毛穴の感覚は、やがてチリチリと変化し、いつまでたっても収まらなかった。やがて全身に...
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