キスリングを背負ったトンネル内の黄色い人影

ユウ_zetterlund

2009年03月11日 11:48



山岳奇譚・怪談CLUB


昔、キスリングという帆布で作られた黄色っぽい色をしたザックが主流だった頃がある。

現在主流である縦長のアタック型のザックとは対照的に、キスリングはでかい本体の左右にこれまた大きなサイドポケットが張り出すように付いている。ボクはキスリングの歴史など知らないけれど、なぜこれが登山の主流になったのか、今でも不思議でならない。

ボクはすぐにこのキスリングに見切りをつけて16歳のときにカリマーの紫色のアタックザック“ハストンバロット”を手に入れ、これ以後、ほとんどアタックザックばかりを使用している。キスリングは世界共通なのか、はたまた日本独自の進化を遂げたザックのスタイルだったのか・・・

ともあれ、現在は隅に追いやられてしまったキスリングは、かつての黎明期には多くの岳人の背にしっかりと背負われていたのを当時の写真に見ることができる。こんな写真ばかりを見ていると、不思議とキスリングが背負いたくなるのだから、つくずく自分は天邪鬼なんだなと呆れる。

さて、今からおよそ10年すこし前のこと。それ以前に母が「また上高地に行きたいわね」と、独り言のように呟いていたのを何度か聞いていて、なぜかそんなことを仕事の合間にふと思い出してしまった。いつもなら懐かしい情景としてすぐに脳裏から消え去ってしまうのだけれど、そのときばかりはちょっと違った。

なんどもその想い出を振り払おうとするのだけれど、どんどん鮮明に思い出され、ついには脳裏から消えなくなってしまったのだ。

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