キャンプで体験・7年ごとに出現する幻の池
=怪談CLUB 其の四=
今回は幻の池。
幻の池と言えば、多くが伝説の類だと思われがちですが・・・実は今からお話しする池はその存在が公的にも確認されています。しかしこの池は実に奇妙。“遠州の七不思議”のひとつに数えられていて、7年おきに出現して数日の後には忽然と姿を消すと云われています。
場所は亀ノ甲山の中腹付近、池の平と呼ばれる場所。
この池、僕も一目見たさに何度か足を運びはしましたが・・・残念ながら、ただ暗い杉林がざわざわ、ざわざわ・・・と、梢を不気味に揺らすばかりでした・・・
幻の池にはいくつもの言い伝えがあり、ある伝説に曰く・・・浜岡町は桜ヶ丘の竜神様が諏訪湖に向かう途中、池の平で休憩するために池が出現する、という話。
またある伝説に曰く、戦国時代この地を領していた奥山家へ、敵する遠山家より政略結婚で嫁いだ“おくわ御前”。しかし遠山家が“おくわ”の嫁いだ奥山家に攻め込んだ。夫は落城寸前に「我が子ともども必ずや逃げ延びよ」と“おくわ”と子供らを城から逃す。しかし夫の言葉も虚しく、逃げる途中で水窪川の淵にかわいいわが子ひとりを奪われてしまった。
おくわ御前は、残るひとりの手を引きながら必死に逃げ惑い池の平にたどり着く。が、おくわと子供は遠山家の武者に追いつかれ、母子ともに一刀の元に斬り殺されてしまった。以来、この池の平には“おくわの無念の涙”がたまるのだという話。
さて、近年まで、これら伝説は伝説として伝えられていましたが、なんと昭和29年のこと。
地元の森林組合の方が枝打ちに入っていた折。遠くのほうから“カーン・・・カーン”という奇妙な物音がする。なんだろう、と見に行って見ると、池の平は美しい水をなみなみとたたえていたのだと。これが、それまで伝説として言い伝わった話が真実だった、と証明された瞬間でした。
池の大きさは、南北100メートル、東西40メートルの楕円形。池の周囲は200メートル。水深は深い場所で3メートル。水は清冽で美しく、木漏れ日が差せば底の落ち葉まで綺麗に映し出すほど。
普段はこのように暗い林がざわざわと風に揺れているばかり・・・
忽然と一夜にして姿を現した幻の池。二メートル下の落ち葉まで綺麗に見えるほどの美しさ。この写真はコンテスト出品作品ですが、じっと眺めていたら・・・画像の中ほどに、池面を見て佇む武士らしき姿を見つけてしまいました。
©美しい日本の村 景観コンテスト
地元産業課の話では、地盤は岩盤のため雨水は流れてしまい留まらない。地下水も標高が高いため湧かない。おまけに、この付近、周囲には沢などの水気は全くなし、とくる。さらに草の保水力説なんていう説もありましたが、平成10年は冬枯れの10月に出現したことで、この説も却下。
つまり・・・水が湧き出す根拠がなにひとつない、ということです。
なぜ膨大な量の水が、ある日忽然と出現するのか・・・どう調査しても皆目理由がわからない。わかっていることといえば“7年に一度、忽然と姿を現し、10日間ほどで消えてしまう”ということのみ・・・実に不思議な話です。
【幻の池出現データ】
昭和29年
昭和36年
昭和43年
昭和50年8月26日
昭和57年8月11日
平成1年9月8日
平成8年(カメラ設置のため水出現せず)
平成9年(カメラ撤去)
平成10年10月2日 ~10日
役場では、池出現の瞬間をカメラに収めようと、録画装置を設置したことがありました。しかし、その時は予定を過ぎても一向に池が現れない。そしてとうとうカメラを撤去したのですが、それを待っていたかのように、忽然と池が出現。まるで、カメラや観察者があると、それを察するかのような不気味さです。
この後の記録は調べていませんが、平成17年は出現したのかどうか。以来、話が洩れ聞こえてこないところを見ると、池はまだ姿を見せてはいない様子。
カメラ設置で周期がずれ込んだのであれば幻の池が現れるのは、もしかしたら今年の8月あたり・・・不思議な物音とともに忽然と姿を見せる可能性があります。はたして池の水の正体は“おくわ御前の涙”はたまた“竜神様”なのか。
今年の夏は、ぜひ遠州にキャンプして、幻の池をその目で確かめる、なんていうのはどうでしょう。
【問い合わせ:水窪産業課】0539-82-0008
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