見えない何かが通りすぎる

ユウ_zetterlund

2008年04月28日 17:08



= 怪談CLUB 其の十一 =

ここのところ、どうしたわけか忙しく、ついつい夜更かしをしてしまいます。世間ではGWだというのに、どこにも出られず、当然のことながら春の雪山にも行けそうにはありません。残念です。

ところで、一昨日の夜中のこと。仕事がひと段落したのは午前零時を回った午前2時半すぎ。やれやれ、と思ってドリップしたコーヒーを片手に庭に出ました。雲さえなければ月が煌々と水田と森を照らしますが生憎の曇天。おまけに田舎ですから街灯もなくて、一面の闇です。漆黒とはまさにこんな状態のことを指したものでしょう・・・
それでも闇夜に目が慣れれば空と森との間境くらいはぼんやりとわかるようになります。しかし真っ暗な水田はどうしても見えません。彼方の森まで広がっている黒い水田からは、カエルの鳴き声がわき起こり、そのけたたましさで頭がくらくらしてくるほどです。

背後は竹やぶ。その上空遠くから絶え間なく聞こえるは、ごぉーごぉー、と野太い海鳴りの音。

コーヒーをひとくち。タバコをぷかり。なんだか気味悪いな・・・ちょうどそう思ったときのことでした。左手遠くからウェーブのように無音の浪が右へ移動して周囲はシン・・・と静まり返ってしまいました。ほんとうに一秒もしない間の出来事でした。

気のせいかもしれませんが、カエルの声が止む直前に、風のように姿の無い得体の知れない何かが左から右へ移動していったようにも思えたのです。それは気配のようなものだったかもしれません。とにかく、何か異様な、姿なき気配だけが通り過ぎたのです。カエルはそれに反応して、左から右へと鳴き止んだ、としか思えません。

シンと静まり返る闇を前に、なんだか背筋がぞくりとしました。相変わらず背後の上空からは、遠く海鳴りが聞こえています。すると次の瞬間のこと。付近の犬たちがいっせいに吠え始めました。暗闇から何かがじっとこちらを伺っているような気分になってしまい、急に鳥肌が立ち始めたため、僕はコーヒーも飲まずに書斎にとって返しました。

ようやく生きた心地です。ふわりと通り過ぎた大きな気配はいったいなんだったのか。無風だったので風ではありません。今思い出しても気味が良くありません。田舎の夜の闇には、得体の知れない何かが潜んでいるようです。


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